認知症のある人が、自分たちに関わる政策づくりに参加することは、医療や介護の仕組みを良くしたり、社会をより民主的にしたりすることにつながります。ですが、そうした参加が実現するかどうかは、自治体の職員など公務員の考え方に大きく左右されます。この研究では、日本の自治体で認知症政策を担当している職員が、認知症のある人の政策づくりへの参加についてどのように考えているのか、またその考えに影響する要因について調べました。
2022年12月、全国の自治体から約1,000人の職員がオンライン調査に参加しました。それぞれの自治体から1人ずつ、認知症に関する仕事をしている職員が対象でした。参加者の職種は、行政職、保健師、その他の専門職などさまざまでした。調査では、認知症のある人への印象、接する機会の有無、認知症に関する情報の入手先、基本的な属性(性別や自治体の規模など)について質問されました。これらのデータをもとに、認知症のある人の政策参加に対する考えとの関係を分析しました。
全体的に見て、多くの職員は認知症のある人に対して比較的前向きな印象を持っており、政策づくりへの参加にもある程度賛成していました。認知症のある人に対して良い印象を持っている職員ほど、その人たちの政策参加にも前向きな傾向がありました。特に、認知症のある人と一緒に活動をした経験があること、そして人口の多い自治体に勤めていることが、政策参加への支持に強い影響を与えていました。また、女性職員であることや、認知症のある人から直接話を聞いた経験があることも、間接的にポジティブな影響を与えていました。こうした経験が、認知症のある人への印象を良くすることにつながり、その結果、政策参加への理解も深まっていたのです。
この研究からわかるのは、公務員が認知症のある人にどのような印象を持っているかが、彼らの政策参加を後押しするかどうかに大きな影響を与えるということです。ですので、偏見や誤解をなくすことがとても大切です。認知症のある人と直接かかわる機会を増やし、その人たちの声を大切にすることが、地域での政策づくりに参加してもらうための鍵になります。