Effect of radiation timing on the capsular contracture of implant-based breast reconstruction: A retrospective cohort study

2013年に保険適用されたことをきっかけに、日本でもインプラントを用いた乳房再建が広く行われるようになった。しかし、乳がん手術後に放射線治療を受けると、インプラントの周囲が硬くなる「カプセル拘縮」という合併症のリスクが高まることが知られている。今回の研究では、放射線治療のタイミング、つまり再建手術の前に行うのか後に行うのかが、カプセル拘縮の発生にどう影響するかを明らかにすることを目的とした。

対象となったのは、2003年から2019年の間にインプラントによる乳房再建と放射線治療を受けた341人の患者で、いずれも同じ形成外科医によって手術が行われていた。手術の種類や放射線治療のタイミングに基づいて患者を分類し、皮膚の状態やインプラントの動きやすさ、再建後1年時点での皮膚のつまみやすさ、エキスパンダーの位置などを評価したうえで、カプセル拘縮の発生との関連を検討した。

分析の結果、放射線治療のタイミングそのものはカプセル拘縮の発生率に有意な影響を与えないことがわかった。一方で、放射線後の皮膚の赤みや炎症の程度、インプラントがどれくらい自由に動かせるか、皮膚の柔らかさを示すつまみやすさ、そしてエキスパンダーの挿入位置などが、拘縮の発症に強く関係していることが明らかになった。実際に2年以内に重度の拘縮(ベイカー分類グレードIII)を発症した患者は全体の約12.6%であった。

以上のことから、カプセル拘縮のリスクを左右するのは放射線治療のタイミングではなく、放射線による皮膚への影響やインプラント周囲の状態であることが示唆された。術後の皮膚ケアやインプラントの操作性、エキスパンダーの配置など、細かな工夫や管理がカプセル拘縮の予防において重要であると考えられる。

論文全文はこちら:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39876615/